2021/3/14。②【再び古巣へ】【高校生達への気持ち】

高橋沢龍君。

昨年末、オーストリアから帰国したとの事だったが、7年ぶりの道場をひたすら懐かしんでいた。

【うわ…懐かしい…】と、何度も言葉にする沢龍君。

しばらく道場を見渡したり歩いたり、昔の様に走るフリをしつつ、サンドバッグを軽く叩きながらも思い出に浸っていた姿を見て、少年部時代の彼の様子がフラッシュバックしていた。

後から来た仲間達と再会すると、更に名残惜しくて、彼はなかなか道場から帰れないでいる様子だった。

会話を交わすと、当時の優しい性格の彼のままだった。

多田先輩と同じく、東京大学を目指して勉学に励んでいるとの話を聞かせてくれた。

左から、雨宮伶空君、星野悠久君、杉浦翔君、相原渚君、高橋沢龍君。(高校2年生達)

4月から全員が高校3年生になる。

彼らは幼少期から、東大和道場で切磋琢磨してきた同世代の幼馴染みであり友人同士でもある。

相原渚君。

当時のスピード感溢れる左右のサイドステップは今も健在。(突き技の当て勘も抜群に良い)

道場に入って来て、最初は少し緊張していた様子もあったが、語り掛ける度に【押忍!】という元気な返事を返してくれる様に戻っていた。

一心不乱に空手の稽古に打ち込んでいた当時の笑顔のままだった。

杉浦翔君。

少年部当時、真向勝負のド突き合いの組手で、重量級の国際大会王者達とも互角に打ち合っていたのも彼。

トップ選手達が集う西東京都大会では、強豪選手達を打ち負かして金星を上げて優勝した時もあった。

国際大会では優勝を目指す中、入賞の掛かる準決勝戦で、対戦相手を圧倒的に攻め込み勝利を目前としていたものの、ラスト1秒の減点敗退に泣いた結末は、俺自身も未だに悔しい記憶として残っている。(対戦相手はそのまま決勝戦へと進出していただけに…)

俺自身の試合の勝敗には言い訳を語る事はしないが、生徒達の事は自分の事以上に悔しい事が実際にあったりもする。

【核弾頭】

まさに当時の彼に相応しい呼び名と愛称としてきたが、今も格闘技向きの頑丈な体躯の持ち主だ。

とにかく豪快で激しい組手だったし、稽古でも試合場でも光り輝いていたのが、杉浦翔君でもあった。

久しぶりに思う存分稽古をして、本当に楽しかったみたいだ。

帰る時には彼が一番、また、空手をやりたそうな表情をしていた。

彼がもし仮に、空手をまた本気でやるのであれば【選手として試合がしたい】との事だったが、それも勿論ありだし、今からであれば全然間に合うよと話した。(ただ、本気で選手を目指してやるのであれば、早ければ早いにこした事はない、迷っていると時間は経過していってしまうだけだから)

勿論、選手としてでなくとも、ストレス発散の為や健康の為、趣味としてでも、体を鍛える事や精神面の強化でも、今からでも、彼ら全員にとって確かな価値のある、新たな空手となるとは思うし、本気であれば、そういう物を間違いなく得られるという保証も出来る。

どんな目的でも勿論良いとは思うし、遅い事はないよと、そういう話も彼らへとしつつ。

雨宮伶空君。

少年部当時はまだ小柄だった彼だが、破壊力抜群の左下突きと直突きで、大きな対戦相手のボディを抉っては効かせてしまう戦いぶりが魅力だったが、その組手はいまだに健在だ。

今後の進路を踏まえて、空手を今後どの様な物としていくかを自分自身で考える様にと彼には伝えた。(学業と部活に専念していた為、現在は休会中の為)

中学生達も一緒に全員で手合わせをしながら。(荒井翔大郎君、加藤遥斗君、星野久遠さん)

多田先輩に胸を借りる、後輩の杉浦君達。

高校生達同士は互いに激しい動きで、昔の仲間達と拳で会話しながら。

幼少期から少年部時代を、空手をやり込んだ生徒達が高校生になると、本当に凄いレベルの物となる。

何年かのブランクがあっても、途中、別のスポーツをしていたり、中高生の間に部活で体を動かしてきた状態であれば、選手としてまた新たに高めていく事も勿論可能だ。

勿論、必ずしも選手を目指さなくても当然ありとして。

何を目的としてやるかも、最終的には自分次第ではあるが、これまでの彼らの空手経験の下積みは、今後の彼らの人生においても一生残っていく物となり、既に貴重なバックボーンでもあり、何をするにしても必ず役に立つ物となっているはず。

星野君の学年は、特に粒揃いの強者達が揃っていただけに、再び彼らの才能に触れ、何とも懐かしく心が躍らされた。

いかついな、核弾頭。

立派に成長している。

稽古後には、皆本当に清々しい表情をしていたし、一人一人が素直な気持ちで話をしてくれた。

昔の生徒達が会いに来てくれるのは素直に嬉しい。

一週間前に彼らから連絡が来て、了承した上で、事前に道場に来る意味を話して伝えてはいた。

来てくれたからには、必ず意味のある空間と時間にさせてあげる事を考えて待っていた。

深い部分へと繋がっている物として。

生徒達を幼い頃から見ていると、大きくなっても、当時の様子や性格や声であったり、空手での彼らの軌跡を知っているだけに、深い部分で通じてくる感覚がある。

2021/3/14